お金を通して出資者と融資先がつながり続ける
「授業でmomoを知りました。自分から行動を起こすのは大変で、いつも動けずにいました。この出資で私も力になれたらうれしい」(10代・女性)
「持続可能でハッピーな地域に少しでも近づけるよう、地域と向き合う小さな一歩として出資しました」(20代・女性)
「娘の出産祝いを出資します。子どもの将来のために役立ててもらえたらうれしいです」(30代・男性)
「定額給付金の使い道を考えましたが、地域や人のためになる事業へ有効に使ってほしいと思いました」(40代・男性)
これらは、筆者が代表理事を務めるNPOバンク「コミュニティ・ユース・バンクmomo」のWebサイトに掲載している「出資者の声」の一部です。
NPOバンクとは、一般の金融機関が融資をしにくいNPOやコミュニティビジネスなどが持つ多様な資金ニーズに対して、1~5%程度の低利で資金を提供する、市民による非営利金融システムのこと。団体の理念や取り組みに賛同する市民やNPOが拠出する一口数万円単位の出資金を原資に、2009年3月末までに、北海道から熊本県まで12つのNPOバンクが約20億円の融資を行っています。これまでに貸し倒れはほとんど報告されていません。
筆者はNPOバンクの最大の特徴を、「顔が見える関係の中でお金を融通し続ける仕組み」にあると考えています。「お金による支援」と聞いて、まず思い浮かぶのが「寄付」と「助成」ですが、NPOバンクはそのどちらとも異なります。寄付ではなく「出資」を集めているため、出資者は請求すれば払い戻しを受けることができます。また、元本割れのリスクもあるため、「自分の大切なお金」という意識を持って、そのお金の行き先に常に着目し続けます。
さらに、助成ではなく「融資」をするため、融資先は支援されたお金を返済しなければならず、返済されたお金はまた別の融資先に循環していきます。つまり、NPOバンクの仕組みそのものが、「お金を通して出資者と融資先がつながり続ける仕組み」となっています。
「自分たちの地域は自分たちで担う」を育む
当団体の融資対象地域である愛知、岐阜、三重の東海三県は、経済のグローバル化の進展に伴い、地域コミュニティの崩壊が深刻さを増しています。各地の都市部では商店街のシャッター通り化が進み、農村部からは「限界集落」という言葉も聞こえるようになってきました。
生まれ育ったまちでずっと暮らしたくても、暮らすことが困難なこの時代、自分が望む地域でずっと暮らしていくためには、ずっと働いていくための事業が必要です。しかし、その事業を起こすために必要な人(特に“若者”)と“お金”は、地域外へと流出しているのが各地の現状ではないでしょうか。
そこで当団体は、地域の「自分たちの地域は自分たちで担う」という当事者意識を育むために、地域の未来を担う若者たちが中心となって、誰もが大切なお金を出資で集め、持続可能な地域づくり事業に低利・無担保で融資をしています(これを当団体では“お金の地産地消”と呼んでいます)。2009年12月末現在の出資者(正会員)数は362(個人348人、団体14団体)、出資総額は3,905万円、融資累計は11件で3,000万円となっています。融資先には、田舎暮らし体験を都市住民に提供する若者たちや、無農薬・無化学肥料の野菜を作る個人事業主、農水路に流れる豊富な水を使ってマイクロ水力発電機の導入実験を行うNPO法人、広報キャンペーンの運営やコンサルティングを通してNPOを支援する株式会社などがあります。
“志金”が真に世の中を変える力となるために
しかし、このお金の地産地消は、「出資を集め、融資を行う」だけでは実現できません。出資者からの“志金”が地域の中で生かされるためには、実は融資をしてからがスタートで、その後も融資先をつかず離れず見守って、必要な場合は手助けをする必要があります。
そのため、当団体では「融資」という“資金的な支援”のほかに、
(1)メディア機能(当団体のネットワークを活用し、融資先に関する情報発信を行う)
(2)場づくり機能(出資者と融資先との対話の場をつくる)
という2つの機能を発揮して、融資後の“非資金的な支援”にも取り組んでいます。
メディア機能では、会員用メーリングリストやニューズレターなどによる「内部者(出資者など)向けの情報発信」と、プレスリリースや取材対応などによる「外部者向けの情報発信」を通して、融資先の取り組みを積極的に紹介しています。こうした情報公開は、貸し倒れに対するリスク回避のためだけでなく、自分のお金がどのような事業に使われ、社会の中でどのような役割を果たしているのかを実感できるというメリットもあります。
また、場づくり機能としては、融資先にとって最も有効な人材が適切な支援をできるよう、融資先のニーズをテーマに出資者などと直接対話する「momo bar」「momo cafe」「融資先訪問ツアー」「経営戦略会議」などを企画運営しています。自分たちのお金が地域を回り、地域に生かされていることを実感してもらい、出資者と融資先がつながることで、地域の取り組みを一緒に育んでいくことを目指しています。
これらの取り組みは、出資者の“志金”が真に世の中を変える力となるために必要なアクションだと考えています。どの融資先も、完済時の基本的なイメージは「必要な経営資源を自分たちで集められるようになる」ことです。審査からその成長イメージを描き、融資後はその仮説を出資者とともに検証していきます。融資先にとっては360人以上の応援団とともに歩むことになり、特に創業期の事業者にとっては心強いようです。
グローバル化ではなく「ローカル化」
「momo」という団体名の由来である童話『モモ』を書いた、ドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデは、経済活動の前提条件であるはずの自然資源を破壊してしまう経済システムの矛盾に目を向けて、お金を次のように表現しています。
「重要なポイントは、パン屋でパンを買うための購入代金としてのお金と、株式取引所で扱われる資本としてのお金は、2つの異なる種類のお金であるという認識です」(NHK番組『エンデの遺言』より)
当団体が扱っているお金は、「パン屋でパンを買うための購入代金としてのお金」です。昨今の金融不安に象徴されるように、「いつ、どこで、誰が、何をしているか」というプロセス(安全)や納得感(安心)が得られにくい金融を、できる限り“見える化”しようという当団体の取り組みには、生まれ育ったまちでずっと暮らしていくための多くのヒントが隠されています。
毎日、何かに追われるように忙しかったり、人間が本来持っていたはずの感受性や豊かさが知らず知らずのうちに奪われていたりする。そんな今の世の中の根本原因は、預金したお金がグローバルに流れ、目に見えなくなってしまっているような、お金の仕組みに端を発してはいないでしょうか。私たちのお金が生かされるべきは、どこに使われるかわからない「グローバル化」よりも、自分と生活する場所の、地域に暮らす人同士の、作る人と買う人のつながりをつくる「ローカル化」だと考えます。将来のために蓄えた預貯金を、あなたはどこに生かしますか?
※2010年2月20日(土)に当団体が主催する「ソーシャルファイナンスフォーラム2010」には、分科会ゲストとして、本マガジン編集長の熊谷幹樹さん(さわかみ投信(株) 取締役)にもお越しいただきます。詳細・申込方法等はWebサイト( http://momobank.exblog.jp/12473171/ )をご覧ください。
【コラム】 改正貸金業法規制からの除外を
今後の最も大きな課題のひとつは、NPOバンクならではの特性による法律への対応です。多重債務者の救済を目的とした改正貸金業法は、純資産額を段階的に引き上げることや、信用情報機関への加入などを業者に求めています。
NPOバンクの純資産額は国会の付帯決議で適用除外となりましたが、信用情報機関への加入義務については未解決で、その加入金や回線開通費などの負担、融資を受けた情報が消費者金融からの融資と同一視されるなど、融資先に不利益を生む可能性があります。
今年6月までに行われる完全施行までに、これらの規制からNPOバンクを除外してもらうために、マスコミや政治家の協力もいただきながら、多くの人にこの問題に関心を寄せていただくことがいま求められています。
木村 真樹 (きむら まさき)
1977年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後、地方銀行勤務を経て、国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」の事務局長やap bank運営事務局スタッフなどを務め、2005年にコミュニティ・ユース・バンクmomoを設立。地域の未来を担う若者たちによる「お金の地産地消」の推進や、社会責任・貢献志向の企業やコミュニティビジネス、NPOに対するマネジメント支援を行っている。







